今日は、平成27年度 第26問について解説します。
借地借家法第32条の賃料増減額請求に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
① 借主が賃料減額請求に関する事件について訴えを提起しようとする場合、それに先立って調停の申立てをすることができるが、調停の申立てをせずに訴えを提起することも認められている。
② 借主から賃料減額請求を受けた貸主は、裁判が確定するまでは、減額された賃料の支払のみを請求することができるが、裁判が確定した場合において、既に受領した賃料額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを請求することができる。
③ 普通建物賃貸借契約において、一定期間、賃料を減額しない旨の特約がある場合であっても、借主は、当該期間中、賃料の減額を請求することができる。
④ 借主が契約期間中に賃料減額請求をする場合には、契約開始時に遡って賃料の減額を請求することができる。
解説
賃料増減額請求に関する問題です。
それではさっそく選択肢を確認しましょう。
選択肢 ①
借主が賃料減額請求に関する事件について訴えを提起しようとする場合、それに先立って調停の申立てをすることができるが、調停の申立てをせずに訴えを提起することも認められている。
×不適切です
賃料増減請求は、相手方に通知(口頭でも可)することにより行います。
通知後に当事者間で合意に至らなければ、裁判手続きを行うことになりますが、訴えの提起の前に、調停の申立てを行う必要があります(調停前置主義)。
そして、調停でも合意が成立しない場合には、最終的に裁判所の判断によって賃料が決定されることになります。
つまり、借主が賃料減額請求に関する事件について訴えを提起しようとする場合、それに先立って調停の申立てをする必要があります。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ②
借主から賃料減額請求を受けた貸主は、裁判が確定するまでは、減額された賃料の支払のみを請求することができるが、裁判が確定した場合において、既に受領した賃料額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを請求することができる。
×不適切です
借主から貸主へ賃料の減額請求がされたとき、裁判が確定するまでは、貸主は相当と認める額の賃料の支払いを請求することができます。
ただし、裁判で減額が正当と確定した場合、すでに受領した額が正当とされた額を超えるときには、貸主はその超過分に年1割の利息を付けて支払う義務があります。
反対に、すでに受領した額が不足となる場合、貸主は不足額を追加で請求することができます。この場合、返還時までの不足額に付けられる利息は、民法の定める法定利率となります。
つまり、借主から賃料減額請求を受けた貸主は、裁判が確定するまでは、相当と認める額の賃料の支払いを請求することができ、裁判が確定した場合において、既に受領した賃料額に不足があるときは、その不足額に法定の利率の利息を付してこれを請求することができます。よってこの選択肢は不適切です。
選択肢 ③
普通建物賃貸借契約において、一定期間、賃料を減額しない旨の特約がある場合であっても、借主は、当該期間中、賃料の減額を請求することができる。
〇適切です。
普通建物賃貸借契約では、賃料を増額しない特約は有効とされる一方で、賃料を減額しない特約については、借主保護の観点から無効とされています。
選択肢の説明通りですので、この選択肢は適切です。
なお、定期建物賃貸借契約では、増額しない特約・減額しない特約のいずれも有効とされます。
選択肢 ④
借主が契約期間中に賃料減額請求をする場合には、契約開始時に遡って賃料の減額を請求することができる。
×不適切です
賃料減額請求権は、将来に向かってのみ行使可能であり、過去に遡って効力が生じることはありません。
つまり、借主が契約期間中に賃料減額請求をする場合には、将来に向かってのみ賃料の減額を請求することができます。よってこの選択肢は不適切です。
以上から、正解は選択肢③となります。
ぜひ関連解説もあわせて理解を深めていただければと思います。
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